おことば(全文)

本日ここに、教派神道連合会結成120周年記念祭典が盛会裏に開催され、皆様とお目にかかれますことを大変うれしく思います。
教派神道連合会は、明治28年(1895)に「神道同志会」の名称で結成されてから、120年の節目の年をお迎えになりましたことに、心よりのお祝いを申し上げます。結成されてからの時代は、政治・経済・文化が大きな変革の時期を迎え、その歩みは平穏なことばかりではなかったと推察いたします。また、震災や戦争という辛い歴史の流れの中で、各教団の皆様がそれぞれに、神道を広め、民衆の祈りのために奉仕されるお立場から努力を重ねられ、今日までその発展に寄与されてこられましたことに、改めて敬意を表します。
昨年のちょうど今頃、伊勢で開催された「宗教的環境保全同盟」の皆さんが参加される「自然環境シンポジウム」に参加させていただきました。キリスト教、ヒンドゥー教、道教、シーク教、イスラム教、儒教といった多くの宗教の指導者たちが世界中から集まられました。西洋の宗教哲学では、「人間は神によって創造された存在であるから、この地球にあるものは人間が自由に利用してもよい」と考えますが、神道では「人間は自然の一部である。人間は自然から切り離されているわけではない」と考えます。この、「私たちは自然によって生かされている」という感謝の気持ちが、多くの宗教者の方々の心を打ち、木々が鬱蒼と茂り、清らかな水が流れる神宮の御神域で、皆さんが一様に「帰りたくない」と、宗教の壁を越えて気持ちを分かち合うことができたのは、大変意義深いことであると感じております。
神社神道と教派神道は分かれておりますが、皇室を尊び、国家を愛し、国民精神の善導に努めるところは同一であるとうかがっております。世界の多くの方々が一目置く、自然に対して畏怖と感謝の念を抱くという神道の根本、そして日本人の根底に流れる思想を仰ぎ見つつ、120周年の節目に当たり、各教団の皆様には手を携え、次の130年へと歩みを進めて頂けたらと願っております。